作成日:2022/9/1

訪問日:2000/8/4

 

封人の家と分水嶺

~松尾芭蕉も泊まった現存する建造物~

 

【カテゴリ:文化・遺産、自然、温泉】


芭蕉も泊まった宿と分水嶺

 

 俳人松尾芭蕉は、奥の細道の旅で出羽街道中山越えを歩き、鳴子温泉(現在の宮城県)から尿前(しとまえ)の関に到着した際、関守に怪しまれて厳しい取り調べを受ける事になります。ようやく取り調べを終え、現在の山形県に入った後、雨宿りを兼ねて2泊したと言われているのが今回ご紹介する封人の家(旧有路家住宅)です。この封人の家は、芭蕉が「奥の細道」の旅で宿泊した中で、唯一現存する建造物と言われています。1969年に国の重要文化財(建造物)に登録されました。

 

 そしてこの封人の家の近くに分水嶺があると聞きました。分水嶺とは、分水界などとも言われていて、水が異なる方向に流れる境界のことです。山の多い日本においては、山稜が境界になっている場合が多く、分水嶺と呼ばれているようです(日本山岳会ホームページより)。ただ今回訪れたような比較的平地に分水嶺があるのは珍しいとのことです。このように自然と文化遺産が同時に見ることが出来ると聞き、訪れました。

最上地方に向かう

 

陸羽車窓から見た日本の原風景
車窓から見た日本の原風景

  旅の起点は山形県北部の新庄駅になります。この新庄を中心とした一帯は山形県の中でも最上地方と呼ばれています。秋田県から奥羽本線経由で新庄に至る路線は、日本の原風景が数多く残されており、大変にお気に入りの路線です。特に秋田県南端の湯沢から新庄に至るまで(もしくはその逆)車窓を眺めながらのんびりと各駅列車に乗ると、とても心が癒されます。今回も少し時間に余裕がありましたので、この区間を各駅列車で往復しました(下記旅程ご参照)。是非、お勧めの路線です。 

陸羽東線堺田駅
陸羽東線堺田駅

  さて封人の家の最寄り駅は、新庄から陸羽東線で10駅目の堺田駅です。お隣の中山平温泉は宮城県になりますので、まさに芭蕉が尿前越えを行った県境の地になります。この堺田駅は秘境駅ランキング(牛山隆信氏「秘境駅ランキング」より)の上位に顔を出すような寂しい駅です(関連記事「秘境駅から歩く」 

 

 陸羽東線は赤字路線の1つで、特に鳴子駅から新庄に至る陸羽東線の西側の赤字幅が大きいようです。是非、これからも微力ながら出来るだけ鉄道を使い、路線継続に貢献したいものです。もちろん堺田駅は無人駅でした。

封人の家を訪れる

 

封人の家
封人の家(工事中)

  最初に封人の家を訪れました。境田の駅から徒歩5分のところにありました。「封人の家」とは国境を守る人の家のことを指すようです。以前は役屋という村役場の性格を持ち、宿場や伝馬の機能を備え持つ国境の大庄屋でした。昭和44年に山形県東部に古くから見られた茅葺き寄棟造り、広間型民家の代表例として重要文化財に登録されました。

 

 またこのあたりは馬の産地としても知られ、俳人松尾芭蕉がここに投宿した際の印象を、かの有名な句「虱蚤馬の尿する枕もと」と表現しました。ただこの句の解釈を巡っては、多くの説があるようです。折角、宿を取ったにも関わらず虱蚤で体中がかゆく、また枕元では馬の尿の音がするという待遇の悪さを書いているという説、また民俗的な観点から、馬が家族同様であるという点を強調しているという説 等です(最上町ホームページより)

 ただ実際に物を見て、個人的にはどちらの説も正しいような気がしました。折角、宿を取って頂いたこのような立派な宿坊に感謝の念を表しつつも、初めて経験する馬の尿の音に驚いた状況を表しているのではないでしょうか。なお建物自体は当時の名士らしい、重厚のあるたたずまいでした。ただ私が訪れた時は工事中で、全容を見ることができず、残念でした。

分水嶺を訪れる

 

分水嶺
分水嶺

  次に訪れたのは封人の家の近くにある分水嶺です。分水嶺の多くは山間の水源近くにあり、今回のように比較的平地にあるのは珍しいようです。ただ残念ながらこの珍しい光景をご説明するのに、肝心の分水の部分の写真撮影が出来ておらず。右の写真のように少し離れたとこから写真撮影したものしか残っていませんでした。小さくて恐縮ですが、ゲートのところに文字が書かれています。右手に書かれているのが「太平洋」、左手に書かれているのが「日本海」、そうです、正に分水の地そのものです。これまで一緒の流れだったのに、ここでたまたま左手に流れた水路がやがて大河になり日本海へ、たまたま右手に流れた水は同じく大河となり太平洋に注ぎ込まれる、大げさな話ですが、この運命の分岐路を見ると、正直、感動すら覚えてしまいました。

温泉巡り

 

  さて自然と文化遺産を堪能した後は待望の温泉巡りです。今回利用した陸羽東線は愛称「奥の細道湯けむりライン」と言われており、温泉の宝庫です。特に陸羽東線の東部の宮城県側には鳴子温泉郷、鬼首温泉郷など有名な温泉地がたくさんあります。今回は折角、山形県の最上地方を訪れましたので、堺田の近くにある赤倉温泉と瀬見温泉を巡りました。赤倉温泉は駅から少し離れていますが、いずれの温泉も静かな温泉地で、旅の疲れを取ることができました。瀬見温泉は平泉に落ち延びる弁慶が開湯したと伝えられ、多くの義経伝説が残る地です。ふかし湯という少し変わった温泉があり、サウナ気分を味わうことができました。もちろん駅から徒歩圏内です。

赤倉温泉
赤倉温泉(陸羽東線赤倉温泉駅から徒歩35分)
瀬見温泉
瀬見温泉(陸羽東線瀬見温泉駅から徒歩10分)

 自然と文化遺産を同時に味わうことができる封人の家と分水嶺を訪れてみませんか。そしてその足で温泉巡りをしませんか。

赤倉温泉駅(2000年撮影)
赤倉温泉駅(2000年撮影)


<関連情報>

是非、立ち寄りたい周辺のお勧め  

肘折温泉

肘折温泉(1996年撮影) お勧め!

月山の麓にある昔ながらの湯治場の雰囲気を残した温泉郷。日本有数の豪雪地帯。JR新庄駅からバスで60分。

雪の里情報舘

雪の里情報館 お勧め!

日本有数の豪雪地帯である最上地方での生活や文化などを学べる。国の登録有形文化財。JR新庄駅から徒歩15分。

万騎ノ原古戦場

万騎ノ原古戦場跡

1580年、最上の領主細川と山形の領主最上が戦い、最上の大軍の前に細川が破れた古戦場跡。JR赤湯温泉から徒歩20分。