キリストの墓【1985/8/5訪問】
<カテゴリ:文化・遺産>
イエスキリストは、弟子であるユダの罪を被り、ゴルゴタの丘で十字架にかけられたと言われていますが、実は十字架にかけられて処刑されたのは弟のイスキリであり、キリストはゴルゴタの丘を登る前にユダヤを脱出してシベリア経由で日本に渡り、日本で最後をとげた、そしてそのお墓が青森県の八戸近くにあるというのです。この一見、荒唐無稽とも思える話を聞きつけ、眉唾ながらも、早速、出かけました。
実はこの場所を「青森を歩く」の中に載せるべきかどうかずっと躊躇っていました。というのはここでご紹介する場所は、東北地方に由来する文化や歴史、自然に基づいているものであり、伝説のようなお話を載せるのは、ふさわしくないのでは?と考えたからです。ただいろいろ調査していくと、昔からこの地方では、キリストにちなんだ地名や行事が数多くあり、文化としても根付いていることがわかりました。また幾つかのバス路線が廃止されていく中でも、ここへのアクセス路線が現存していることも貴重です。伝説の真意はともかく、ここでご紹介させて頂くことにしました。
ここでは歴史書ではないので、事の発端を簡単に紹介させて頂きます。茨城県の竹内家に代々伝わる古文書に記述された内容に基づき、昭和5年にこの地を訪れた竹内巨(おおまろ)が、「この地にキリストの墓があるはずだ」と村内を歩き周り、発見したというものです。この古文書は古事記以前に書かれたということですが、存在の真意は定かではありません。現在は、偽物と断定されているようです。ただこの地方には昔からそれを思わせる地名や言葉がいくつかあったようです。そもそもキリストの墓がある新郷村自体は、戸来(へらい)村と野沢村の一部が合併してできた村ですが、この戸来(へらい)が、「ヘブライ」という聖書の言葉に由来したものでは言われています。
旅の起点は、東北本線の八戸です。私が訪問したのは、1985年8月上旬の真夏の真っ最中の頃でした。
余談になりますが、八戸は今では東北新幹線も通っている青森県第2の都市なのですが、八戸の中心街は、八戸から八戸線で2駅隣の「本八戸」になります。「本」という名前がついていることに、駅間での縄張り争いのようなユニークなものを感じます。
写真は、JRに民営化される前の旧国鉄時代の八戸駅です。もちろん東北新幹線開通前です。
八戸の駅から路線バスに乗り、五戸で乗り換えます。
これも余談になりますが、岩手県の北部から青森県の東部にかけて、「~戸」とつく地名が続きます。ただ「一戸」から「九戸」まであるようですが、「四戸」のみはありません。文献によると、以前は「四戸」もあったようですが、現在はないようです。そのあたりの経緯を調べるのも楽しいものです。右の写真は五戸のバス停です。
五戸で乗り換えてバスに揺られること約35分、いよいよキリストの墓に近づいてきます。キリストの墓というからには、どんなに豪華なお墓なのでしょうか、少し緊張してきます。沢口というバス停でおりると、すぐに「キリストの墓」という案内板がありました。
そこから入ると道は二手に分かれていて、右がお墓、左がキリストの舘跡になっています。キリストの館跡には前述の竹内古文書の写しが展示されていました。お墓に向かうと2つのお墓が並べられており、向かって右がキリストの墓、左が弟イスキリのお墓のようです。どちらも直径10mほどの円墓で、結構、芝に覆われていましたが、手入れはされていました。ただ当初想定した豪華なものではありませんでした。なにしろ35年前のことですので、かなり記憶が薄れており、頼りになるのは当時、私が書いた旅のメモだけです。それによると「特に変哲もないお墓」としか書かれていません。あまり印象がなかったようです。
ちなみにこの地では、毎年、6月の第1日曜日に「キリスト祭り」が催されています。ユニークなのは、そのお祭りに「神主」による祝詞が詠みあげられるということです。すなわち「神道」と「キリスト教」が混ざったお祭りなのです。是非、機会があればキリスト教祭りにも訪れたいものです。
竹内家に伝わる子文書が本物でない以上、このキリストの墓は史実ではなさそうです。ただそれでもこの地に古くから伝わる伝説を、広い気持ちで見たいものと思いながら、往路と同じ経路で帰路につきました。
なお最新のアクセス路線を調べたところ、このバス路線は残っているようです。またキリストの墓も整備されているようで、「キリストの里伝承館」も出来ているようです。是非、皆さんも一度、伝説の地に訪れてみては如何でしょうか。
<関連情報>
①旅程※時刻は訪問当日の時刻表です。もし訪れられる場合は最新の時刻表をご参照頂きますようお願いします。
【1985/8/5】
東北本線八戸(9:45)=(南部バス「五戸」行き)=五戸(10:17)=(南部バス「羽井内」行き)=沢口(10:55)=(キリストの墓)
沢口(11:35)=(南部バス「五戸」行き)=五戸(12:11)=(南部バス「八戸」行き)=八戸
②最新のアクセス情報:上記旅程で記述したバス路線は現存しているようですが、キリストの墓への最寄りのバス停は、「キリスト公園」に変わっているようです。バスで訪れる際は、ご注意ください。
③是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)
八戸三社大祭(1997年撮影)
毎年7/31~8/4にかけて行われ、三社の神輿行列と市内各町の華麗な人形山車が八戸市中心地を巡行する。2004年に重要無形民俗文化財、2016年には、八戸三社大祭を含む全国33の「山・鉾・屋台祭り」がユネスコ無形文化遺産に登録された。
是川学習館(1997年撮影)
青森県を始めとした北東北では縄文遺跡が数多く発掘されることで知られている。2021年には「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界遺産に登録された。ここ是川学習館では、是川や八戸の遺跡の出土品などが展示されている。八戸駅からバスで20分
蕪島(1985年撮影)
青森県を代表する景勝地である種差海岸の最北端に位置し、ウミネコの繁殖地として知られている。国の天然記念物にも指定されている。ウミネコは、毎年3月上旬に飛来して、4月頃に産卵、6月頃にはヒナがかえり、8月には蕪島を飛び立つ。JR鮫駅から徒歩12分
②キリストの墓