小坂鉱業事務所と康楽館 ~鉱山で栄えた小坂の街を歩く~
<カテゴリ:自然、文化・遺産>
秋田県の北東部に小坂町という町があります。四方を山に囲まれた小さな町ですが、歴史と自然に恵まれた私のお気に入りの町です。知られているようで意外と知られていないのですが、青森県を代表する観光地である十和田湖は、秋田県と接しており、それが小坂町にあたります。従って十和田湖は小坂町の代表的な観光地でもあるのです。
さてこの小坂町は、今から約160年前に小坂鉱山が発見されて以来、金・銀等の鉱山産業とともに栄え、鉱山の町として歴史を歩んできました。明治時代になると、金・銀に加え、銅や亜鉛等も採掘されるようになり、今回ご紹介する小坂鉱山事務所などの多くの近代的な建物が建てられ、町は発展してきました。当時、秋田県の中では、秋田市に次ぐ大きな町にまで発展したようです。ただ第2次世界大戦を契機に、ご多分にもれず鉱量の枯渇などにより鉱山は衰退し、1990年には閉山となってしまいました。現在では鉱業技術を生かした環境リサイクル産業や、鉱山の歴史や文化を生かした観光の町として発展しています。そして今回、ご紹介するのが、その鉱山で栄えた歴史的建造物である「康楽館」と「鉱業事務所」等の施設です。いずれも平成14年に国の重要文化財に指定されました。
ただ最初にお断りしなければなりません。この小坂の町には何度も訪れたことがありますが、最近はすっかりご無沙汰してしまい、その間、町は大きく変貌しているようです。一応、最新の状況などもご紹介するようにしていますが、もし小坂町を訪れる機会があれば、最新の状況ご確認頂きますようお願いします。また私も今回ご紹介する鉱業事務所やレールパークなどは生まれ変わってから訪れていないため、是非、機会があればもう一度、小坂の街を訪れて、ここに再度ご紹介したいと思います。
旅の起点は花輪線の花輪駅になります。花輪駅からバスで向かいますが、小坂町への交通手段としては、同じく花輪線の大舘駅からもバス路線があります。私は何時も花輪駅よりバスを使っていました。
余談になりますが、この花輪線は東北本線の岩手県盛岡市好摩駅と、秋田県北部の奥羽本線大舘駅を結ぶ地方路線ですが、御多分に洩れず赤字路線になっており、先日発表された輸送密度においても、500人/日未満の乗車数です。沿線は奥羽山脈越えによる山間地帯、のどかな田園風景、日本の原風景とも思える素晴らしい景色を楽しむことができます。是非、これからも出来る限り鉄道を利用して、少しでも路線存続に貢献したいと思います。
康楽館を訪れる
康楽館は小坂町立の芝居小屋で、国の重要文化財です。町の中心部にあり、旧金毘羅大芝居(香川県琴平町)、永楽舘(兵庫県豊岡市)とともに、日本最古級の劇場として知られています。元は明治時代に、小坂鉱山を経営していた藤田組により鉱山労働者の慰安施設として建てられたものですが、なんと未だに現役の芝居小屋として活躍しており、歌舞伎の公演も行っています。右の写真を見て頂いてもおわかりのとおり、明治時代に建てられたとは思えない、モダンな洋風建築です。私が訪れた時は、芝居の公演がなく、若いお兄さんに中を案内してもらいました。モダンな外見とは別に、建物の中は鉱山で栄えた時代の名残がある昔流の劇場様式となっており、その対比が大変にユニークでした。
鉱業事務所を訪れる
最初にお断りしないといけません。実は私が最後に鉱業事務所を訪れたのは1991年ですが、その時の写真は右の通り、外見はよくある工場の普通の事務所でした。その後、小坂町が文化財としての保存に取り組み、2001年に別の場所に移転復元されました。その際、壁面はモルタルから白い漆喰に、屋根もトタンから杉板ぶきのバルコニーへと大きく変貌したようです。そして先にご紹介した康楽館とともに、国の重要文化財に指定されました。
新しく生まれ変わった建物はモダンな洋風建築で、当時を模したようです。中にはアミューズメントやアトラクションなどもあり、家族連れでも楽しむことができるようです。是非、私も機会があれば、再度訪れてその内容をこの場でご紹介したいと思います。
小坂鉄道跡
これも最初にお断りしないといけません。私が最初に小坂の町を訪れたのは1986年の秋でしたが、その時の目的の1つがこの小坂鉄道に乗車することでした。小坂鉄道は、秋田県大館市の大舘駅から小坂駅まで小坂精練が運営していた貨物鉄道路線でしたが、一時期、旅客営業も行っていました。その後、小坂鉱山の閉山とともに、1994年には旅客営業が終了され、2009年に小坂鉄道自体は廃止されました。その後は小坂レールバイクとして生まれ変わり、ディーゼル機関車・ラッセル車が一般展示されていて、実際に運転体験ができるようです。さらに2015年には寝台特急「あけぼの」が使用されていた寝台客車を利用した列車ホテルが開業されています。
余談ですが先日のテレビ放送で、小坂鉄道の廃線跡をたどる番組が放映されていました。廃線跡ファンとしては大変に心を揺り動かされてしまいました。是非、機会があれば、再度、生まれ変わった小坂レールバイクを訪れるとともに、小坂鉄道の廃線跡を歩きたいと思います。写真は1986年の秋に撮影した小坂鉄道の駅舎と列車です。
是非、皆さんもかつて近代日本を支えた鉱山の跡地を活用して発展しつつあり、そして新旧の文化が織り交ざった小坂の街を訪れてみませんか。私も機会があれば新装となった小坂鉱業事務所と小坂鉄道の廃線跡と訪ねたいと思います(関連情報ご参照)
<関連情報>
①旅程※時刻は訪問当日の時刻表です。もし訪れられる場合は最新の時刻表をご参照頂きますようお願いします。
②本ページ公開後、「小坂は、江戸時代には盛岡藩に属していたはず。なぜ秋田県に編入されたのかご存知でしょうか」というお問い合わせを頂きました。私も本稿を作成するにあたり、それなりに下調べはしているつもりでしたが、本件は全く気付きませんでした。ネット等で調べた限り理由はあまり書かれておらず、是非、次回小坂を訪れる機会があれば、直接、博物館等で調べてみたいと思います。
③是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)
発荷峠から望む十和田湖(1986年撮影)
十和田湖を見下ろすことが出来る展望台は幾つかあるが、秋田県側の代表的な展望台。十和田湖から盛岡や花輪で向かうバスから望むことができる。運転手によっては休憩時間を取ってくれて写真撮影が出来る。十和田湖からバス約30分。
小坂町立博物館・郷土館(1991年撮影)
小坂町の歴史と自然を紹介する博物館。小坂鉱山をジオラマ等でも紹介。小坂町中心部にあり。
④康楽館、小坂鉱山事務所