白水阿弥陀堂とみろく沢炭鉱資料館

~福島県唯一の国宝建造物と偶然に出会った私設の炭鉱資料館~【2022/6/4訪問】

<カテゴリ:自然、文化・遺産>


 福島県のいわき地方に福島県でただ一つの国宝の建造物があると聞き、早速、出向きました。そしてその道中に、かつて炭鉱で働いていた方が開設している私設の資料館に「偶然に」出会うことができました。旅の醍醐味は、もちろん予め目的地を決めて、それに向かってアクセス経路を調べて出向くことですが、その旅程で、偶然、穴場的なものを見つけた時の喜びです。それが、今回、ご紹介するみろく沢炭鉱資料館です。

国宝白水阿弥陀堂
国宝白水阿弥陀堂

白水阿弥陀堂を訪れる

 最初に国宝「白水阿弥陀堂」を訪れました。ここは阿弥陀信仰が盛んであった平安時代末期の永暦元年(1160年)に、岩城忠道の妻である徳姫により建立されたと言われています。ちなみに徳姫は奥州藤原文化最盛期の当主である藤原清衡の娘です。本堂には、阿弥陀三尊(阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩)と二天像(持国天像、多聞王像)の5体が安置されており、いずれも国指定の重要文化財になっています。東北地方に残る平安時代の建築物は、中尊寺金色堂、高倉寺阿弥陀堂(宮城県角田市)と、この白水阿弥陀堂の3棟のみのようです。そしてSNSなどでも言われていますが、国宝なのにお堂の中に入ってお参りすることができます。

白水阿弥陀堂の庭園
白水阿弥陀堂の庭園

 そしてここ白水阿弥陀堂が大変に貴重なところは、堂を囲う庭園です。昭和36年に周辺を造成する際にその存在が明らかになりました。そしてその後の調査によって、平泉文化と関連が深い浄土式庭園であることが判明しました。どこか岩手県にある毛越寺の庭園と思わせるようなたたずまいです。実際、非常に似たたたずまいですが、毛越寺と違い、御堂と浄土庭園が一緒に拝観することが出来ることです。昭和27年に国宝に指定されました。ちなみに福島県では唯一の建造物としての国宝です。

常磐線内郷駅
常磐線内郷駅

  そのような福島県唯一の建造物の国宝を訪れるべく出向きました。旅の起点は常磐線の内郷駅です。案内によると内郷駅から徒歩約30分のところにあります。もちろん「東北を歩く」としては徒歩で向かいます。事前に地図を見た時にはもう少し山の中にあるかと思いましたが、意外と平坦な道でした。

 そしてその道中に「みろく沢炭鉱資料館」と書かれたいかにも手作りの道標があるのを見つけました。「何かおもしろそうだ!」、長年の経験と勘がそう思わせます。すぐに立ち寄りたい気持ちを抑えて、まず当初目的の国宝白水阿弥陀堂に向かいました。

 白水阿弥陀堂は、予想通り本堂と庭園の調和が素晴らしく、厳かな雰囲気の中、浄土の世界を堪能することができました。実はもう少し規模が大きいものを想定していました。実際、庭園の規模などでは毛越寺には劣りますが、SNS等で書かれている通り、本堂と一緒に拝観することができる素晴らしいところで、十分に雅の世界を堪能することができました。

 ちなみに本堂では仏像の説明があり、落ち着いてお参りすることができます。帰宅後、いろいろ調べて見ると、秋の紅葉の時にはライトアップされるようで、是非、機会があれば今度は秋に訪れたいと思います。

みろく沢炭鉱資料館への道標
みろく沢炭鉱資料館への道標

みろく沢炭鉱資料館を訪れる

 はやる気持ちを抑えて、いよいよ国宝への道中に見つけた「みろく沢炭鉱資料館」を訪れました。恐らく途中で見つけた道標まで戻ることもなく、近道があるに違いないと思いつつ、迷ってしまうことを懸念して、途中まで引き返して、資料館を訪れました。

 ここは江戸時代末期安政3年(1856年)に片寄平蔵により石炭が発見され、常磐炭田のルーツと言われています。その後、首都圏のエネルギー供給源になるまで大きく発展しました。しかし石炭から石油へのエネルギー転換により閉山が相次ぐようになりました。ここみろく沢炭鉱は、昭和30年代にこの炭鉱で働いていた渡辺氏が退職後、付近の写真や採掘に使用した鉱具、地図などを集め、平成元年(1989年)にここ「みろく沢炭鉱資料館」を開館したものです。そして平成19年には露頭している石炭を採掘した後、実際の石炭層を見学することができるようになりました。

みろく沢炭鉱資料館
みろく沢炭鉱資料館

  博物館は途中の道標に従い、向かいます。道中には、石炭を発見した片寄平蔵の碑や、片寄平蔵の後を引き継ぎ石炭業に貢献した加納作平の碑がありました。それらの碑を楽しみつつ、坂を登ったところに資料館がありました。正直、同じいわき市にある「いわき市石炭・化石館ほるる」のような大規模な設備と比較して規模も小さく、また決して整然と展示されているわけではありませんが、いかにも手作りの博物館の雰囲気です。早速、中に入らせて頂きました。ちなみに入館料は無料です。資料館の中は、照明やカンテラ、運搬用トロッコ等、石炭採掘に使用した道具や当時の写真などが所狭しと陳列されており、予想通り私好みの大変に見応えのあるものでした。

みろく沢炭鉱資料館内部
みろく沢炭鉱資料館内部

  博物館の外に館長とおぼしき方がいらっしゃったので、早速、お話を聞いてみました。このあたりの炭鉱はエネルギー面で日本の産業を支えたものであり、是非、多くの方に炭鉱の様子を知って頂きたいとおっしゃっていました。私に出来ることはこのブログを通して、多くの方に訪れることを呼びかけることしかありません。是非、日本の産業を支えた炭鉱の歴史を振り返るためにも、この炭鉱資料館に訪れて頂きたいと思います。なお館長からは、国宝白水阿弥陀堂からの近道を教えて頂きました。やはり近道があったようです。最初にみろく沢炭鉱を訪れていれば、白水阿弥陀堂には近道で行くことができたので、若干、悔やまれます。

 是非、皆さんも福島県唯一の国宝建造物である白水阿弥陀堂を訪れ、雅の世界を堪能すると同時に、かつて日本の産業を支えた炭鉱の歴史を知ることができる私設の資料館を訪れてみては如何でしょうか。


<関連情報>

①是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)   

牡丹園

いわき市石炭・化石館ほるる(2022年撮影)

いわき市はかつての炭鉱の城下町として栄えたが、同時に化石が多く発掘されることでも知られている。舘内はそれらを展示するため、化石の展示と石炭の展示エリアに分けれて展示されている。湯本駅から徒歩12分

 

翠ケ丘公園

さはこの湯(2022年撮影)

江戸時代末期の建物様式を再現した格式のある純和風の日帰り公衆浴場。湯本駅から徒歩8分


②みろく沢炭鉱資料館と白水阿弥陀堂