三陸鉄道各駅停車 ver1(旧JR山田線区間)

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 ご存知の通り三陸鉄道は、日本最初の第3セクターの鉄道で、かつその後、生まれた第3セクターの鉄道の中で最長距離を誇る路線です。三鉄の愛称で親しまれています。元々は旧国鉄時代より建設が進められてきた海岸沿いを縦断する路線の計画でしたが、御多分に洩れず赤字路線のため、建設中であった路線も含めて1981年には廃止の決定がされました。これを受けて岩手県と沿線の市町村が第三セクター「三陸鉄道株式会社」を設立して、1984年4月1日に全通が開通する運びとなったのです。

三陸鉄道路線図
三陸鉄道路線図と今回ご紹介範囲

 開業当初は、久慈~宮古間の「北リアス線」と、釜石から盛間の「南リアス」の2路線から構成されており、その間を挟むように宮古と釜石間の「旧JR山田線」がありました(左記ご参照)。当初は黒字経営ではありましたが、沿線住民の減少や鉄道利用者の減少とともに、経営が苦しくなり、1994年には赤字経営となってしまったのです。

 さらに2011年3月11日の東日本大震災では、壊滅的な被害をもたらしました。多くの駅舎や路盤が流出してしまったのです。報道等で見る限り、復興までにかなりの長期間要するのではないか、もしくは復興は難しいのでは?とすら覚悟したほどでした。しかし地元住民の願いもあり、部分開通を重ね、なんと3年後の2014年には全線開通の運びとなったのです。さらに2019年には、それまで北リアス線と南リアス線がJR東日本の山田線で分断されていましたが、JR山田線が三陸鉄道に譲渡されて、久慈~盛間を結ぶ長大な第3セクターが誕生しました。

 なお全線開業後まもない2019年10月には、台風19号(令和元年東日本台風)により再び被害を受け不通区間が生じてしまいましたが、半年後の2020年3月までに再度全線復旧しました。 

 実は私はこの三陸鉄道に対して特別の思いを持ってきました。まずなにより三陸鉄道が開業したのが1984年ということで、丁度、私が東北の旅を始めた年です。早速、同年には全線を乗車、その後、何度も乗車しました。

三陸鉄道
三陸鉄道(豪華列車)1990年撮影

 東日本大震災後、全線開通した2014年には再度全線乗車、そしてJR山田線が移譲されて新生三陸鉄道になってから再度全線乗車といった具合に、節々のタイミングで乗車してきました。沿線は見所も多く、乗車するたびに新しい発見の連続でした。ここではこの愛すべき三陸鉄道沿線のお勧めスポットをご紹介したいと思います。なおなにしろ長大鉄道ですので、何回かにわけてご紹介したいと思います。もちろんすべて最寄りの駅からのバスと徒歩圏内です。

 今回ご紹介するのは、旧JR山田線の区間(宮古駅~釜石間)です。この旧JR山田線の区間は、東日本大震災により甚大な被害を受け、多くの駅舎が津波により流されてしまいました。一時、BRT(注)による復興案も検討されたようですが、地元住民の強い要望もあり、鉄道を継続することで決着して見事に復興しました。

 三陸鉄道の駅名にはすべて愛称もつけられています。ここでは一緒にご紹介したいと思います。是非、皆さんも三陸鉄道に乗って旅に出ませんか。

 


魹ケ崎【宮古駅】※愛称:リアスの港

 宮古駅は沿線の主要都市でもあり、義経が平泉を逃れ参籠した伝説がある横山八幡宮、僧侶が「さながら極楽浄土のごとし」と感嘆したことから名づけられた浄土ヶ浜など見所満載ですが、やはり「東北歩く」としては、本州最東端の魹ケ崎をお勧めします。変化に富んだアプローチ、雄大な大自然、どれをとっても素晴らしいの一言です。JR宮古の駅からバスと徒歩で約100分です。なお魹ケ崎については別項で詳しく記述しているので、ご参照ください。

宮古駅
宮古駅(1985年撮影)
魹ケ崎本州最東端の碑
魹ケ崎本州最東端の碑(1990年撮影)

くじらと海の科学館【岩手船越駅】※愛称:本州最東端の駅

 上記でご紹介した魹ケ崎は本州最東端の「地」ですが、ここ岩手船越駅は本州最東端の「駅」です。かつて周辺には沿岸部唯一の遊園地である「マリンパーク山田」がありました。いろいろなアトラクションがあり、1992年に開催された「三陸・海の博覧会」の会場にもなりました。ただその後は不況や少子化などにより入園者も減少の一途をたどり、ついに1999年3月に閉園となったのです。1988年開園ですから、わずか11年という短命の遊園地でした。まさにバブル時代の残骸といってもいいと思います。そしてその後に残されたのがこの「くじらと海の科学館」です。1987年に三陸沖で大きなマッコウクジラが捕獲されたことをきっかけに作られた、文字通りくじらを中心とした三陸の海やその周辺の自然環境が展示されています。東日本大震災の時は甚大な被害を受けて、長期間、休館となっていましたが、2017年に再開しました。岩手船越駅から徒歩8分です。

岩手船越駅
震災前の岩手船越駅(1987年撮影)
震災後の岩手船越駅
震災後の岩手船越駅(2019年撮影)

岩手船越駅
かつてのマリンパーク山田(1990年撮影)
くじらと海の科学館
くじらと海の科学館(2019年撮影)

浪板海岸【浪板海岸駅】※愛称:片寄浪のサーフサイド

 波板海岸は、返し波のない「片寄せ波」の海岸として有名です。目の粗い砂に波が吸い込まれてしまうので、返しがないということです。ただ実は大変にお恥ずかしい話なのですが、私は「片寄せ波」の意味が理解できていません。確かに普通の海岸と比べると返す波が少ないとは思いますが、全く返す波がないこともなく、どこが「片寄せ波」なのかわかりませんでした。私が少し深く考えすぎているのか、通常の海岸より返す波が少なければそれでいいのか、もしくは私の理解が不足しているのか、是非、詳細をご存知の方がいらっしゃれば教えて頂きたいと思います。

 なお波板海岸は、東日本大震災により砂浜が消滅したようですが、その後も返す波が小さいようです。従って片寄せ波の原因が、砂の目が粗いためそこに波が吸い込まれているためでもないようです。駅から徒歩10分です。

波板海岸駅(1990年撮影)
波板海岸駅(1990年撮影)
波板海岸(1990年撮影)
波板海岸(1990年撮影)
波板海岸(1990年撮影)
波板海岸(1990年撮影)

蓬莱島(ひょうたん島)【大槌駅】※愛称:鮭と瓢箪島の町

 大槌駅から徒歩約40分のところに大小2つの丘が連なったひょうたん形をした島があります。駅の愛称にもなっている通り、かつてNHKで放送されていた「ひょっこりひょうたん島」のモデルと言われています。小さい方の丘には、灯台がありましたが、東日本大震災により倒壊、その後、再建されました。大きい方の丘には弁財天神社があり、そこで祀られている弁財天は漁民の守り神とされてきました。東日本大震災でも奇跡的に流出は免れました。ただ顔などの傷があったため修復されました。本当にひょっこりひょうたん島のモデルだったのか、若干、眉唾ですが、なかなか変わった島ですので、是非、一度は訪れみる価値はあると思います。

 なお大槌駅徒歩1分にある「トキシラズ」の煮干しラーメンは非常に有名で、絶品の味でした。

 

震災前の大槌駅(1990年撮影)
震災前の大槌駅(1990年撮影)
震災後の大槌駅(2019年撮影)
震災後の大槌駅(2019年撮影)
蓬莱島(2019年撮影)
蓬莱島(2019年撮影)

復興スタジアム【鵜住居(うのすまい)駅】愛称:トライステーション

 鵜住居駅には根浜海岸という素晴らしい海岸がありますが、ここでは駅の愛称にもなっている復興スタジアムをご紹介します。ご存知の通り、2019年に日本でラグビーワールドカップが開催されましたが、その時の会場の1つです。この地域一帯は東日本大震災で甚大な被害を受けました。その後の復興支援のため、元より釜石がラグビーの街として有名であったこともあり、ラグビーワールドカップの会場の誘致を進め、実現されたものです。ちなみにワールドカップ会場の中で唯一の新設会場だったようです。あの時の興奮はまだ皆さんの頭の中に残っていると思います。

 私が訪れた時はまだ会場建設中の最中でしたが、正直、交通の便が心配でした。なにしろアクセス手段といえば、三陸鉄道のみでしたので、試合当日はどのように来場者をさばくのか心配していましたが、特に問題もなく終えたようです。駅から徒歩5分です。 

震災前の鵜住居駅(1990年撮影)
震災前の鵜住居駅(1990年撮影)
建設中の復興スタジアム(2019年撮影)
建設中の復興スタジアム(2019年撮影)
根浜海岸(1990年撮影)
根浜海岸(1990年撮影)

鉄の歴史舘【釜石駅】愛称:鉄と魚とラグビーの町

 釜石はいわずとしれた鉄の街です。日本初の西洋式高炉を建設した偉業を後生に残すために、鉄の歴史舘が1985年に開館、1994年にはリニュアルされました。私が出向いたのは1986年ですから、写真は開館直後(リニューアル前)の写真です。舘内には、原寸大に復元された高炉の大模型や映像による鉄鋼産業の近代化、釜石の鉄の歴史、関連した人物の紹介などが展示されています。釜石駅からバスと徒歩で40分、または平田駅から徒歩25分です。

 また近くには釜石大観音があります。

 

震災前の釜石駅(1990年撮影)
震災前の釜石駅(1990年撮影)
震災後の釜石駅(2019年撮影)
震災後の釜石駅(2019年撮影)
鉄の歴史舘(1987年撮影)
鉄の歴史舘(1987年撮影)


<参考情報> 

*BRT(Bus Rapid Transit:連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーン等を組み合わせることで、速達性・定時制の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム(国土交通省のホームページより)