白竜湖~消えゆく自然を守りたい~(訪問日時:2023年6月18日

<カテゴリ:自然>


 山形県の南部置賜地方に白竜湖という湖があります。周囲は山々に囲まれ、ぶどう畑などののどかな田園風景を作りあげており、ふるさとの原風景として知られています。ヘラブナ釣りの絶好の場所として、またハンググライダーの聖地としても有名です。

白竜湖
白竜湖

 一方、周辺一帯は、大谷地と呼ばれる10万年前から形成されてきた泥炭湿地であり、白竜湖はその上に浮かぶ湖です。一歩、踏み込めば泥に沈むため、決して農業には適していませんでした。それでも先人が戦後の食糧増産のため、大谷地の干拓とかんがい用水を整備するなどの努力と苦労を重ねて、現在の豊かな田園地帯を作りあげてきました。この湿地帯としての環境や土壌となる泥炭層が山形県指定天然記念物に指定されています。

 またこの種の湖によくあるように、この白竜湖にもいろいろな伝説が伝えられています。

・この地方で日照りがつづいたため、あちらこちらで水争いがおこるようになった。そこに旅の僧が天に向かって経文を三日三晩唱えたところ、雨が降り出した。その時、湖から白竜が巻物を加えて天に昇った。

・若い僧に恋をした娘が、恋がかなわないことに悲しみ、湖に身を投げ、白竜となって天に昇った  等々

白竜湖
白竜湖

 ところがこのような豊かな自然と多くの伝説が残されている白竜湖ですが、排出する河川がないこともあり、近年、水質の冨栄養化によりヒシが繁茂したり湖面が浅くなるなど、今世紀中の消滅が危惧されています。この豊かな自然を守るための運動も行われているようです。そのような湖があると聞き、早速、現地に出向きました。

 なお最初にお断りしないといけません。私がここで紹介するスポットは、実際に足を運んだ地の中から、東北地方の自然や文化のすばらしさをお伝えするために、是非、皆さんにも足を運んで頂きたい場所を選んでいます。ところが今回、ご紹介する白竜湖は、決して実際に出かけることはお勧めできません。なぜならば日によって非常に足元が悪くなるため、長靴等の本格的な装備が必要なためです。

赤湯駅
赤湯駅(奥羽線側口)

 実際、私が行った時も、大雨の後であったこともあり、足元がぬかるんでいたため、ある地点から進むことができませんでした。今回はこの豊かな自然と生態系の破壊が進む状況を是非知って頂きたいことを目的にご紹介させて頂きたいと思います。決して皆さんに足を運んで頂くのはお勧めできません。

 旅の起点は奥羽本線の赤湯駅です。この赤湯駅は山形新幹線も止まる大きな駅です。また山形鉄道長井フラワー線の起点にもなっている駅です。ちなみにこの山形鉄道長井フラワー線は大変にお気にいりの路線で、このブログの別の項でもご紹介させて頂いていますので、合わせてご参照頂ければと思います。

 さて赤湯駅を出た後は、赤湯の温泉街を抜け、徒歩約30分で白竜湖に到着しました。到着するまでは、SNS等でも言われている通り、周りを一周できるようなコースがあるものと思っていました。

白竜湖
白竜湖

 ところが湖の近くまで行くと泥炭地であるためか、足元が悪く、危うく足をすくわれそうになり、容易に近づくことができませんでした。丁度、釣りをしている方がいらっしゃったので、湖に近寄るための道順を聞きましたが、ここ最近の大雨のため足元がぬかるんでいるため、長靴などがないとこれ以上は近づくことは危険だということでした。大雨の後は、かなり遠くまで水かさが増えるようです。ただ湖を一周したというSNSでの投稿もあったので、散策コースがあるのではないかと少しでも近づくことを試みましたが、やはり足元が悪く、これ以上、進むことはできませんでした。周りを見渡しましたが、いずれもこれ以上近づくことができないようです。

白竜湖
白竜湖

  私が出向いた日がよくなったのでしょうか。残念ながらこれ以上、近づくことは断念しました。全容を見ることはできませんでしたが、少し遠くから白竜湖を撮影しました。なるほどあたり一帯はどこから湖でどこから平地なのか判別ができないような状態でした。ただ深いところでも水深1mくらいしかないようで、これ以上、泥が堆積したり、水面に浮かんでいる水草により太陽の光が届かない状態が続くと、いつかは干上がってしまうだろうなと想像がつきました。調査によると1年に1センチの速さで浅くなっているようです。水深が1mとすると100年後には干上がってしまうことになります。以前はこの白竜湖の自然環境をよみらせるため、ヒシを刈り取ることにより水質を改善させるためのプロジェクトもあったようです。プロジェクトの前には1年に1センチの速さで浅くなっていましたが、ヒシを除去するプロジェクトが行われ、浅くなる速さは1年あたり0.5センチと効果はあったようです。それでも200年後には湖が消滅することになります。実際、専門家はプロジェクト後も消滅の危機が消え去ったわけではないこと危惧されているようです。

 

白竜湖
奥羽本線から撮影した白竜湖

 なお今回は水量が多かったため、近くまで行くことができませんでしたが、白竜湖を空から取った写真がネットでも出ています。このあたりは南陽スカイパークと呼ばれるスカイレジャーエリアになっており、日本有数のハングライダーの基地にもなっています。世界選手権も開かれたことがあるようです。下からはほとんど確認することができなかった白竜湖の全容も空から見ればよくわかるようです。もしくは少し小高いところを奥羽本線が走っていますので、車窓からも眺めることができるようです。

 

 このような自然と生態系の破壊は全国至るところで起きています。是非、皆さんもこの自然保護に関心を持って頂き、先人たちが残していった豊かな自然と生態系を我々の子孫にも残していきたいものです。


<関連情報>

①是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)  

肘折温泉

赤湯温泉(2023年撮影)

米沢盆地の北東部にある静かな温泉街。共同浴場が多いことでも知られており、飲泉湯や足湯もある。赤湯駅から徒歩12分

 

最上公園

烏帽子公園(1999年撮影)

桜、松、楓などが配置されており、四季折々に景観と眺望を楽しむことができる。さくら名所100選(財団法人日本さくらの会)にも選定されている。赤湯駅から徒歩13分

 


②白竜湖