海向寺の即身仏と酒田の街並みを歩く(2018/8/13訪問

<カテゴリ:文化・遺産>


  即身仏をご存知でしょうか。即身仏とは、特に江戸時代以降、飢餓や病に苦しむ人々を救うために、僧侶自らが犠牲になり命が絶えるまで修行を続け、そのまま仏になられた姿です。

 現在、日本には17体の即身仏があり、そのうち山形県には8体があると言われています。山形県に即身仏が多い理由は諸説あるようですが、山岳信仰で有名な湯殿山と関わりがあるそうです。実際、即身仏の多くが湯殿山で修行した僧侶のようです。そしてその8体のうち、2体が収容されているのが、今回ご紹介する酒田市にある海向寺です。同じ場所に2体の即身仏が安置されているのは、ここ海向寺だけです。

海向寺
海向寺

 即身仏について簡単にご説明をしたいと思います。即身仏になるために、最小限の食べ物をとりながら、3年から10年近くかけて徹底的に脂肪を落として骨と皮だけにしていきます。これは死んだ後も腐敗しないためのようです。その後、深さ約3mくらいの地下に潜り、地上とは細いパイプのようなもので空気を取り入れながら、息が絶えるまで断食をして、お経をあげ続けます。僧侶は時々鐘を鳴らし、まだ生きていることを地上にいる人に伝えます。そして、その音が聞こえなくなることにより、絶命したことを地上の人は知ります。まさに壮絶な修行です。その後、一定期間後に掘り起こされ、必要な手当てを行った後、安置されます。

 ミイラと即身仏は同じだと思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、ミイラは遺体から内臓を取り出した後、防腐等の措置を行うものです。最終形は同じであっても、自らの意思で生きながら仏になる即身仏とは、その意味が異なります。なお現代においては、自殺ほう助にあたるので、実質、即身仏はありません。

JR酒田駅
JR酒田駅

 さてこのように一か所で2体の即身仏が見れることを聞きつけ、早速、出向きました。旅の起点はJR羽越本線の酒田駅です。ご存知の通り、酒田は古くから東西の貿易の中継地として栄え、その繁栄ぶりは「西の堺、東の酒田」と言われていました。また鳥海山や日本海に挟まれた庄内平野の中心地として、お米や日本酒の産地としても知られており、私のお気に入りの街です。

 ただ先日、久しぶりに酒田を訪れましたが、非常に気になることがありました。それは酒田駅周辺の商店街の店という店がほとんど閉まっているのです。いわゆるシャッター通りになっていたのです。有名なデパートも閉店になっていました。酒田の町は何度か訪れたことがありますが、以前からこのような状態だったのでしょうか。非常に気になるところです。

 さて海向寺はJR酒田駅から徒歩で約20分に位置する真言宗のお寺です。もちろん徒歩圏内です。数人ずつの固まりで案内をしていただけます。私が訪れたのは、コロナ禍前の2018年の夏でしたので、数人ずつ案内するというのは、コロナ対策ではないようです。大変に残念ながら写真撮影は不可でしたが、説明は大変に親切でわかりやすく、また即身仏に関する展示もあります。最初、即身仏を見た時は、少しぎょっとしましたが、きっと今でも人々の苦しみや病を沈めるために、守ってくださっているに違いないという穏やかな気持ちになりました。もし、今(2022年4月)、もう一度訪問の機会があれば、早くコロナ禍を沈めて頂きたいとお願いしていたに違いありません。

 

 国内で、唯一、2体同時に安置されている海向寺に訪問して、是非、その足で酒田の街並みを散策してみませんか。

 


<関連情報> 

①是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)   

木造六角灯台(2018年撮影)

明治28年(1895年)建築。日本最古の木造灯台と言われており、山形県有形文化財。酒田市郊外の日和山公園に設置。JR酒田駅から徒歩20分

相馬楼(2002年撮影)

江戸時代から続く料亭を修復して平成12年に開楼。朱色の塀が雅な風情と漂わせている。国の登録文化財。竹久夢二の美術品なども展示。酒田駅から徒歩15分。

あいおい美術館

あいおい美術舘(2018年撮影)

酒田市内の古民家を利用した美術館。かつて北前船で運ばれた美術工芸品や民芸品など多数展示。JR酒田駅から徒歩8分

 


②酒田市海向寺と相馬楼と日和山公園(木造六角灯台)