掬粋巧芸舘~偶然に見つけた隠れた名所~【2017/6/11訪問】

<カテゴリ:文化・遺産>


  「すごい!、これはすごい!」、何度叫んだことか。私は美術工芸品の専門家ではありません。そんな私でもここで陳列されている巧芸品の価値はわかります。こんなとっておきの穴場を「偶然に」見つけました。旅の醍醐味は、もちろん予め目的地を決めて、それに向かってアクセス経路を調べて出向くことですが、その旅程で、偶然、穴場的なものを見つけた時の喜びです。それが、今回、ご紹介する山形県の掬粋巧芸舘です。

羽前小松駅
JR米坂線羽前小松駅

 実はその日、私は別の目的で山形県の川西町に出向きました。川西町は山形県の南西部に位置する人口15,000人規模の小さな町です。当日の目的地は、作家井上ひさし氏寄贈の「遅筆堂文庫」その他でした。最寄りの駅は、米坂線の羽前小松駅になります。

 少し余談になりますが、この米坂線は、米沢駅から新潟県の坂町駅までを結ぶローカル鉄道ですが、2hrに1本程度の便のため、念入りな下調べが必要です。ちなみに途中駅の今泉駅では、山形鉄道長井フラワー線と交差しており、こちらの方は1hrに1本程度の本数です。米坂線の接続状況が悪い場合は、赤湯駅から長井フラワー線に乗り、今泉駅まで行き、そこから米沢に戻ることも手です。まるで刑事ドラマの時刻表トリックに出てきそうです。左の写真は羽前小松駅ですが、例に洩れず、無人駅です。また駅周辺は、誰1人とも出会いませんでした。

掬粋巧芸舘
掬粋巧芸舘

 そしてこの羽前小松駅から川西の街並みをブラブラ歩いていると、偶然、「掬粋巧芸舘」の案内を見つけました。「なにか面白そう!」長年の勘と経験が、私をその巧芸舘に向かわせます。

 掬粋巧芸館は羽前小松駅から徒歩10分程度です。すぐに発見しましたが、館内に入ると、受付らしき方がいらっしゃいません。いろいろ探してみましたが、ようやく職員と思しきお年を召した方に出てきて頂きました。その時に分ったことですが、実は掬粋巧芸舘自体が事前予約制のようでした。もちろん、偶然に見つけたなど言えるわけもなく、なんとかお願いして中を見せてもらいました。ただお年のためか案内を頂く時の足元が少しおぼつきません。予約もなしに、本当に申し訳ないことをしました

掬粋巧芸舘
掬粋巧芸舘

 展示物のある建物は受付のある建物とは別にあります。ここでは、日本・中国・朝鮮を中心とした古陶磁器、書画、刀剣、仏像など約600点ほどが収蔵・陳列されていました。聞いてみたところ、これらは樽平酒造の創業者である井上氏が明治末期より集めたコレクションのようです。ちなみに樽平酒造は掬粋巧芸舘の前にあります。

 とにかく驚いたのは、紀元前のものが数多くあり、素人ながらもこれは重要文化財級の逸品ではないかと思うような古い陶器等が、保存状態のよい状態で数多く陳列されていることです。何度も「これは凄い」と声を出してしまいました。また建物自体も格式のあるものでした。後で調べたところ、開館が1932年で、日本の私立美術館の中でも、歴史の古いものの1つのようです。また所蔵品の1つである、「染付飛鳳唐草文八角瓢形花生」は、実際に重要文化財でした。世界的にも名品のようです。ただ所蔵品ということなので、当日、実際に展示されていたかは、定かではありません。

 陳列されている建物はそれほど広くはないのですが、時間の経つのも忘れて見入ってしまいました。ただ案内頂いたご老人には、ずっと待っていただいていたので、予約もなく訪れたことの申し訳なさもあり、30分ほどで見学を終えました。

 

 偶然に素晴らしい美術館を見つけた興奮と、なぜこれほどの重要文化財級の展示物が、このような小さな街(地元の方、ご免なさい!)の小さな美術館に展示されているのかという思いにかられて、次の目的地に足を運びました。

 とにかく美術品に詳しくない方でも、ここで展示されている陶芸品のすばらしさには驚かれると思います。駅からのアクセスもよく、是非、お勧めしたいと思います。


<関連情報>

①旅程※時刻は訪問当日の時刻表です。もし訪れられる場合は最新の時刻表をご参照頂きますようお願いします。

【2017/6/11】

東京(8:08)=(山形新幹線127号)=米沢(10:25)(10:29)=(米坂線)=羽前小松=(徒歩:遅筆文庫、掬粋巧芸館)

 

現在(21年8月末日)、掬粋巧芸舘は新型コロナ禍のため、閉館しているようです。また今後、開館された場合でも、事前予約が前提のようですので、ぐれぐれもご留意頂くようにお願いします。

 

③是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)   

ダリヤ園

ダリヤ園(2017年撮影)

約4ヘクタールの園地には、8月から11月にかけて、約10万本のダリヤが咲き誇る。米坂線羽前小松駅から徒歩12分

筆遅文庫

遅筆堂文庫(2017年撮影)

川西町出身の小説家井上ひさしの蔵書22万冊が収蔵されている。米坂線羽前小松駅から徒歩約5分

 


④掬粋巧芸館