「閖上(ゆりあげ)」の朝市と「かわまちてらす」の北限のしらす~【20/6/21訪問】

<カテゴリ:文化・遺産>


 私が東北地方の文化や自然に魅せられてしまい東北地方に通い始めてから40年近くがたちますが、当初と比べて旅のテーマが変わってきたように思います。当初は「自然」や「お祭り」「鉄道」「山」が中心だったのですが、最近ではこれらに加えて、「義経伝説」「奥の細道」「博物館」「酒蔵巡り」などといった「文化」「歴史」に関するテーマが増えてきたように思います。こういった新しいテーマが増えるたびに、私の東北地方をめぐる旅もループをしてしまい、40年かけても続いているのです。

 そしてその新しいテーマの1つが間違いなく「朝市」です。20~30代の時もその地方の朝市には必ず出かけていたのですが、今思い出すと観光ガイドに載っていたので行っただけのように覚えています。要はその場所に行ったというカウント稼ぎだったように思います。お蔭さまで大方の有名な朝市には出向いたのですが、何を食べたのか、どんな雰囲気であったのか、ほとんど記憶と記録がないのです。なんというもったいないことをしたのでしょうか!その土地の名産物を食べたり、その土地の方とお話しをすればよかったと悔やまれて仕方ありません。今からでも遅くありません。朝市も主要テーマの1つに掲げてその地を訪れるようにしています。

閖上の朝市
閖上の朝市

 今回、ご紹介するのは宮城県名取市にある閖上(ゆりあげ)の朝市です。江戸時代から漁港として栄えていた閖上地方は、近くの運河を利用して仙台城下へ海産物を運んでいたという歴史があります。今から約40年前ですから、丁度、私が東北地方の旅を始めたころに、この閖上地区にも朝市が生まれていたようです。

 当初は海産物が中心でしたが、お客さんが増えるに従い野菜や日用品などを扱うようになり、どんどん規模が大きくなりました。また水餃子や天ぷらパンなどの名物グルメも生まれ、賑わいを増していきました。

かわまちてらす
かわまちてらす

 ただ閖上地区は海岸に近いということもあり、2011年3月11日の東日本大震災では、壊滅的な被害を受けてしまいました。しかし震災後、わずか約2週間後には、近くの大型商業施設の駐車場を借りて、仮の姿ではありますが朝市が復活して、閖上地区の住民の交流の場にもなりました。そしてだんだんと閖上地区の朝市の再開の機運が高まり、2013年12月に「ゆりあげ港朝市」が復活したのです。

 さらにそれから約5年半後、ゆりあげ朝市から徒歩約15分の地に新しい商業施設「かわまちてらす」が生まれました。ここは平屋建て3棟の中に20件以上の飲食店や海産物、スィーツなどの店が軒を連ねています。名取川沿いにオープンテラスとなっているので、オーシャンビューを楽しみながら食事を味わうことができます。

 このように昔からある朝市と最近できた商業施設が比較的隣接した地にあると聞きつけて、早速出向きました。

仙台空港線美田園駅
仙台空港線美田園駅

 私が出向いたのは、2020年の6月21日でした。2020年といえば、コロナによるパンデミックになった年で、4月には全国に緊急事態宣言が発動されました。また同時に2020年といえば、東日本大震災の影響で長期間普通となっていた常磐線が、何度かの部分開通を経て、3月14日に全面開通した年でもあります。常磐線はJRの鉄道の中でも「本線」ではない路線の中で最も長い路線です。東北地方の鉄道をほぼ踏破した私でしたが、この常磐線だけは乗車していない区間が多く、今回の全線開通の日を楽しみにしていました。

 このように2020年は、コロナ禍を避けながらも常磐線走破をテーマとして、何回かにわけて常磐線の東北地方部分(岩沼~勿来間)を旅しました。ちなみに閖上の朝市に出向いたのは、コロナ禍による全国的な緊急事態宣言が解除された直後です。そしてその約1か月後には、同じ名取市の雷神山古墳を訪れました。雷神山古墳については、別項でご紹介していますので、ご参照頂ければと思います。

閖上朝市への道のり(広瀬川沿いを歩く)
閖上朝市へ道なき道を広瀬川沿いに歩く

閖上朝市を訪れる

 旅の起点は、仙台空港鉄道の美田園という駅です。実はこの仙台空港鉄道についても乗車したことがありませんでした。開業が2007年ということですから比較的最近に出来た路線のようです。文字通り仙台空港に行くための路線で、仙台駅からは東北線経由で直通運転も行っています。

 さて閖上の朝市は美田園駅より徒歩45分のところにあります。余談ではありますが、以前はその地を訪れると、まず駅にある観光案内所に行き、そこで地図をもらい、その地図を頼りに目的地を訪れたものです。今はMAPアプリさえあれば、ほぼ全国どこでも案内してくれます。本当に便利な時代になりました。ただ時々、MAPアプリはとんでもない経路を案内してくれます。今回、この閖上朝市も、とても正規の道とは思えない、ほとんど堤防の上を歩くような経路を案内してくれました。従って直線距離ではもう少し早く到達すると思っていたのですが、45分もかかってしまいました。このあたりについては、別項で述べたいと思います。

メイプル舘
メイプル舘

 美田園駅から45分かけて閖上の朝市に到達しましたが、(大変に失礼ながら)予想以上の大変な賑わいでした。実は本当をいうともう少し賑わっているのかなと思っていたのですが、コロナ禍による緊急事態宣言が明けてまもないということもあり、予想していたよりも少ないように感じたようです。それでも最近の状況をネット等で調べてみましたが、さらなる賑わいになっているようでした。

 朝市では約50の店が出店していますが、事前に調べた名物料理である水餃子、天ぷらパン、焼きおにぎりなどをたっぷり食べました。どれも噂通り大変に美味しかったです。魚の鮮度がいいため、結構、遠くから訪れる人も多いようです。ただ実は当日、もう1つの目的である「北限のしらす」を食べるために、少しお腹を残しておくことは忘れませんでした。

 近くにはカナダが支援して作られたメープル舘があります。朝市は日曜日祝日のみの営業ですが、ここメープル舘は平日も営業をしているようです。

みちのくトレイル名取センター
みちのくトレイル名取センター

 少し離れたところに「みちのくトレイル名取センター」がありました。ご存知の通り「みちのくトレイル」は東日本大震災の復興を祈念して、環境省を中心に作られた東北地方沿岸の遊歩道です。青森県の八戸から福島県の相馬市までの4県28市町村をつなぐ全長1000kmを超える壮大な自然歩道です。その拠点がいくつかあり、最も大きなものが、「みちのくトレイル名取センター」です。私もみちのくトレイルの名前は聞いており、まさに「東北を歩く」の究極のテーマとは思っていますが、この年にして1000kmもの道を歩くだけの体力と時間があるのか、今後の新たな検討課題にしたいと思います。

 

慰霊の塔
慰霊の塔

かわまちてらすを訪れる

 さて閖上の朝市を後にして向かったのが、徒歩約15分のところにある「かわまちてらす」です。ここは名取川沿いに2019年にオープンした商業施設です。平屋建ての建物に約20件ほどのテナントが並んでいて、地元の食材を生かした食事やフルーツを味わうことができます。ただすでに閖上朝市でお腹が一杯の状態でしたので、ここでは名物の北限のしらすだけを食べました。

 しらす漁について調べてみたところ、2017年の7月より閖上港等によりしらす漁の操業が本格的に始まり、北限のしらすとして有名になったようです。ただこれまでにももっと北の方でしらすを食べたことがあるような記憶がありますが、確かな記憶と記録がありません。恐らく食べたとしても別の港で取れたしらすを食べたと思われます。その地区で取れるしらすとしては、ここが北限であるとのこと、信じることにしましょう。

 

洞口家住宅を訪れる 

 閖上の朝市とかわまちてらすでたっぷり食事を取った後は、近くにある「名取市震災伝承館」と「洞口家住宅」をたずねました。特に洞口家住宅は「かわまちてらす」から徒歩30分程度要しますが、平面間取りで田の字型をした仙台領内最大規模の古民家ということで、国の重要文化財に指定されています。のどかな農村地帯を歩いていると忽然と現れました。大変な掘り出し物でした。

名取市震災伝承館
名取市震災伝承館
洞口家住宅
洞口家住宅

 皆さんも是非、閖上の朝市とかわまちてらすで地元産の食事をした後、国の重要文化財でもある洞口家に訪問してみては如何でしょうか?すべて歩くにはなかなか手ごたえのある距離ですが、楽しい1日を送ることができると思います。


<関連情報>

①旅程※時刻は訪問当日の時刻表です。もし訪れられる場合は最新の時刻表をご参照頂きますようお願いします。

【2020/6/21】

東京(6:40)=(東北新幹線やまびこ203号)=仙台(8:59)(9:14)=(仙台空港アクセス線)=美田園(9:34)~(徒歩)~閖上市場(10:30)

閖上朝市~(徒歩)~かわまちてらす~(徒歩)~洞口家住宅~(徒歩)~美田園駅(14:00)

 

②閖上の朝市