検断屋敷と材木岩【2011/8/9訪問】

<カテゴリ:自然、文化・遺産、温泉>


 郊外を歩いていると忽然と古い街並みが現れる、そんな風景に出会うことが出来る場所が日本にはいくつもあります。東北で代表的な場所は福島県にある大内宿です。ただ大内宿は有名になりすぎて、いつ訪れても多くの人で賑わっています。先日、久しぶりに訪れた時も多くの修学旅行生で混雑していました。またテレビの旅番組でもよく取り上げられています。

 規模こそ大内宿ほどではありませんが、同様に古い街並みを味わうことができるのが、今回、ご紹介する宮城県にある検断屋敷です。まるで江戸時代にタイムスリップしたような静かな時間を楽しむことができます。また近くには国の天然記念物に指定されている材木岩があり、自然と文化を同時に味わうことができます。

検断屋敷
検断屋敷

 検断とは、中世の日本において、警察・治安維持等に係る行為・権限・職務を総称した用語のようです。白石市のホームページによると、ここ検断屋敷は、「寛永年間から明治維新に至るまで上戸沢で検断役を務め、さらに問屋や本陣に準じた役割も担った木村家の住宅」で、「平成15年に白石市小原の材木岩公園内に移築復元された」、「仙台藩の古い形態を残す検断屋敷の遺構として貴重」ということで、県指定有形文化財に選定されたとあります。上戸沢はかつて約30戸の住人がいて、伝馬、輸送の業務にあたっていました。本陣はなかったようですが、木村家は本陣に準ずる宿泊・休憩所を提供していたようです。

 同じ公園内には高さ65m、幅100m近くにもわたる、まるで何本もの巨大な材木を立てかけたような材木岩を眺めることができます。同じく国の天然記念物に選定されています。公園の川沿いには桜並木が続き、桜の名所としても有名です。また4月下旬には、大量の鯉のぼりが川の上を泳ぐ光景を見ることができるようです。

東北新幹線白石蔵王駅
東北新幹線白石蔵王駅

 このように自然と昔ながらの街並みを同時に味わうことが出来ると聞きつけて、早速、出向きました。

 旅の起点は東北本線白石駅、もしくは東北新幹線の白石蔵王駅です。ちなみに白石蔵王の駅は、その駅名が示すように蔵王の登山口にもなっており、私も何度かここを起点にして蔵王に登山しました。

 ここからバスに乗り最寄りのバス停に向かうのですが、実はこのバス路線は全国規模の時刻表には載っていません。白石市の市民バス、もしくはお隣の七ケ宿町の町民バスを使うことになります。私がこういったコミュニティバスの存在を知ったのは、同じく七ケ宿にある限界集落に行く際に、いろいろ探した結果、発見しました(なおコミュニティバスについては、変わりゆく風景にも記載していますので、合わせてご覧頂ければと思います)。

藤坂バス停
藤坂バス停

  さて検断屋敷に最も近いバス停は、白石市民バス小原線の江志前というバス停ですが、路線図(白石市ホームページよりをご覧いただければおわかりの通り、1日数本しかなく、丁度私が訪れた時には列車との接続がよくありませんでした。そこで白石市民バスではなく、七ケ宿町営バスの最寄りのバス停から歩いていく方法はないかということで再度路線図を調べてみました。その結果、ありました。「藤坂」というバス停です(小さい字で恐縮ですが、左下に赤字で印をつけました)。ここから少し歩きますが、徒歩20分で検断屋敷に行くことができます。民家のない静かな道です。地図を拡げて最寄りのバス停を探し出す、まさに鉄道とバスと徒歩による旅の醍醐味です。

材木岩
材木岩

 さて検断屋敷には、当時の街並みや屋敷が再現されており、まるで江戸時代にタイムスリップしたような静かな時間を過ごすことができました。特に私が訪問した日はほとんど人もいませんでした。当時を知る古文書、農家レストランや農産物直売所などもあり、たっぷりと時間を過ごすことができました。

 同じ公園内にある材木岩は予想通り、圧倒的な大きさに驚かされてしまいました。実は当日まで材木岩の意味を理解していませんでしたが、物を見てようやく理解できました。よく建材置き場に立てかけられている材木の様相で、なるほど、だから材木岩というのかわかりました。調べてみたところ、かつて安山岩のマグマが、水成岩の層を貫いて噴出し、冷え固まった時に出来たようです。4月下旬には、大量の鯉のぼりが川の上を泳ぐ光景を見ることができるようです。また桜の名所としても知られていて、桜の季節には川沿いには桜並木が続くようです。

 帰りのバスの時刻までに4hrもあったので、十分に古い街並みと自然の造形美を堪能することができました。

  さて帰り道に、行きのバスで見かけた少し気になる小原温泉に立ち寄りました。予想通り大当たりでした。私がたまたま訪れた日帰り入浴の温泉がよかったのかわかりませんが、温泉そのものは普通の温泉と変わらないものの、その応対が素晴らしく、是非、今度は泊まりの宿としたいと思った次第です。

  古い街並みと自然の造形美、そして温泉を満喫した1日でした。是非、皆さんも自然と歴史、文化を同時に満喫することが出来る、この検断屋敷と材木岩を訪れてみては如何でしょうか。出来れば、少し人が多いかもしれませんが、鯉のぼりの季節か桜の季節をお勧めします。

 


<関連情報>

①旅程※時刻は訪問当日の時刻表です。もし訪れられる場合は最新の時刻表をご参照頂きますようお願いします。

【2011/8/9】

東京(7:12)=(東北新幹線)=白石蔵王(9:11)(9:22)=(七ケ宿町営バス)=藤坂(9:55)~徒歩(検断屋敷、材木岩)~藤坂(13:55)=(七ケ宿町営バス)=小原温泉=白石蔵王

 ※訪問当時のバス時刻です。

 

②是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)   

白石武家屋敷(旧小関家)

武家屋敷(旧小関家)(2004年撮影)

片倉家の家臣である小関家の屋敷。享保15年(1730年)建築。平成3年に白石市に寄贈。宮城県指定文化財。JR白石駅から徒歩15分

レンガの油庫(白石駅構内)

レンガの油庫(2010年撮影)

明治20年に作られた貯蓄油施設の油庫。駅が開業して以来の油を保管していた倉庫。白石駅構内に設置。JR白石駅徒歩ゼロ分

弥治郎こけし村

弥治郎こけし村(2011年撮影)

弥治郎こけしの特徴である大きな頭とろくろ模様の胴体について詳しく展示。JR白石駅より市民バスが運行されている。バスで約25分

 


③検断屋敷と材木岩