日和山 ~日本一低い山に登る~【2023/4/23】

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 日本で一番高い山は?と聞かれたら誰もが「富士山」と答えることでしょう。では日本で一番低い山は?と聞かれて答えることが出来るでしょうか。そんな山が宮城県、しかも大都市仙台にあるのです。それが今回ご紹介する「日和山(ひよりやま)」です。標高はなんと3mです。背の高い人(例えば大谷翔平選手)の身長が2m近いので、3mというとその1.5倍程度にしかすぎません。大谷選手の1.5倍の高さが山なのでしょうか。

日和山
日和山

 資料によると、元々、日和山は標高が6mあり、日本で一番低い山でした。しかし1996年7月に大阪の天保山が国土地理院の地形図に掲載されると、日和山は日本で2番目に低い山になりました。ところが2011年3月11日東日本大震災で発生した津波により山が削られてしまい、2014年の国土地理院の調査で標高3mの山と確認され、再び日本一低い山として返り咲いたことになったのです。東日本大震災の影響により、18年ぶりに日本一の座を奪還したことになります。正直、複雑な気持ちではありますが、とにかく現地に出向くことにしました。

仙石線中野栄駅
仙石線中野栄駅

 旅の起点は、宮城県仙石線の中野栄駅です。ちなみに余談になりますが、この仙石線は沿岸を走る区間が多いということもあり、東日本大震災により甚大な被害を受けました。震災当初は全線不通となりましたが、部分開業を経て2015年には全線復旧となりました。

 さて旅の起点は「中野栄駅です」と書きましたが、正しくないかもしれません。目的地によっては、まさか歩いてくる人など想定していないのか、駅から徒歩によるアクセスは書かれていない場合があり、今回の日和山がそうでした。そのような時は、周辺地図を拡げて、最寄り駅を探しだしてそこから歩くのが、歩く旅の醍醐味です。今回の場合は、仙石線の中野栄駅が最も近そうです。

日和山への道のり
日和山への道のり

 中野栄駅を降りて、MAPで確認したところ、日和山まで徒歩63分でした。早速、日和山に向かい歩き始めましたが、なんと予想外なことに私の前を多くの若者が既に同じルートを歩いていました。しかし多くの同士がいることに安心したのもつかの間、彼ら彼女らの目的は、近くにあるアウトレットモールであると判明しました。すぐに1人となり、ひたすら堤防沿いを歩くことになります。

 このあたりは東日本大震災により甚大な被害を受けた地区で、さら地も多く、廃校となった小学校もありました。また当日は日曜日にも関わらずほとんど人と会うこともなく、1hrかけて日和山に向かいました。

 歩くこと丁度60分、ようやく目的地の日和山に到着しましたが、そこで見た光景は・・・なんと驚くものでした。

 まず写真①をご覧ください。これは堤防から日和山を見下ろした写真です。そうです。山より高いところに堤防があり、そこから見下ろすように日和山がそびえ立って?いるのです。周りの方が高い山って一体・・。

 さらに②の写真をご覧ください。これは堤防から降りて正面から撮った写真ですが、なんと周囲とほとんど高さが同じなのです。どこが山なのでしょうか。標高3mと聞いていたので、少なくとも周囲からはそれとわかるような盛り上がりがあるものと思っていました。

日和山①(堤防の上から)
日和山①(堤防の上から)
日和山(正面から)
日和山②(正面から)

 そういう意味で「山」とは一体何でしょうか。少し根源的な疑問が出てきました。早速、調べてみました。Wikipediaによると「山とは周囲より高く盛り上がった地形や場所のことを言う。地形学では丘陵や台地よりも周囲との相対的高度差や起伏が大きいものを指す」とあります。これは驚きです。私はてっきり一等三角点なりきちんと定義があるものと思っていました。周囲より高く盛り上がった地形となると、おらが町にもありそうな気がします。例えば建築現場などで土が盛り上がった景色を見ますが、あれは山とは呼ばないのでしょうか。いろいろ少し調べて見ると、どうも人工的に作られたのは山とは呼ばないようです。

 さらに次のようにも書かれています。「周囲とどの程度の高度差があれば山と呼ぶかについては、国や地域ごとの習慣、領域や研究者ごとに差異があり、一概には決まっているわけではない。例えば日常生活で人々は、ある盛り上がった地形を指して、ある時は「山」と呼んでみたり、またある時は「丘陵」、「岡」、「丘」などと呼んだりすることがあり、区別は必ずしも明確ではない」。

 ん~ますますわからなくなってきました。いずれにしても国土地理院認定の日本一低い山であることだけは間違いないようです。早速、登山を開始しましたが、わずか2秒足らずで頂上に到達しました。めでたく私の山歴に1座が加わりました。

 それにしても登山道?のあちらこちらに、ジョークとしか思えない標識がたくさん立てかけられているのには笑ってしまいました。「遭難注意」「滑落注意」「高山植物採取禁止」等々です。あげくには「熊に注意」とまで書かれています。富士山の山開きに倣って7月1日に山開きのイベントもあるようです。地元の方の日和山への愛情が伝わるようでした。

高砂市民センター
高砂市民センター

 標識の中に「高砂市民センターで、当日撮影した写真を見せると登頂証明書を発行してくれる」と書いてあるのを見つけました。早速、高砂市民センターを調べたところ、日和山から徒歩60分かかるようです。再度、1時間の歩きとなりますが、ここまできたからには証明書をもらわない手はありません。再度60分歩いて高砂市民センターに向かうことにしました。

 なおここ日和山は、最寄り駅であると思われる中野栄から徒歩60分のところにありますが、途中、中野新町というバス停を発見しました。どうも仙台駅からバス路線が通じているようです。これであれば歩く距離を半分に減らすことができます。

登山証明書
日和山登頂証明書

 高砂市民センターでは、当日撮影した写真を見せて、登頂証明書をもらいました。なお市民センターでは日和山の歴史などがよくわかる展示がされていました。それによると「日和山は、ここ仙台港の南側、蒲生干潟に面した蒲生地区にあり、以前の標高は6.05m。平成3年国土地理院の地形図に掲載され、日本一低い山になりました」と紹介されていました。また日和山の由来は、「寛文年間に開削された御船入堀の土砂でできた山、あるいは大正時代に大規模な養魚場を開設した時に掘り返した土砂で出来た山など諸説ありますが、もともとは海の日和を見るために築山された人工の山です」とあります。

 う~ん、やはり人工的に作られた山ではないのかという気持ちが芽生えてきましたが、あまり難しく考えないことにしました。

 

 皆さんも是非、海の日和を見るために日本一低い山に登山?してみませんか。どうせなら富士山の山開きと同じ日に開催される、日和山の山開きに参加することをお勧めします。今年(2023年)の7月1日は土曜日ですので、私は参加してみようと思います。ただ地元の案内によると、本格的な登山装備が必要とのことです。参加される場合、くれぐれも遭難にはご注意ください(笑)。


<関連情報>

①是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)   

肘折温泉

仙台うみの杜水族館(2018年撮影)

かつて松島にあったマリンピア松島水族館の後継水族舘として2015年にオープン。子供のみならず大人でも楽しむことができる。中野栄駅から徒歩15分

最上公園

三井アウトレットパーク仙台港(2023年撮影)

普通のアウトレットに加えて、高さ50mの観覧車やポートフラワー等が併設されており、テーマパークとしても楽しむことが出来る。中野栄駅から徒歩7分

 


②日和山