伊豆沼はす祭り~伊豆沼の夏の顔~【2009/8/7訪問】

<カテゴリ:自然、祭り>


 宮城県中部の栗原市と登米市にまたがる伊豆沼は、東北地方最大の低地湖沼で、東京ドーム83個分の広さを誇ります。そして冬になると、毎年2,000~3,000羽のオオハクチョウや数万羽のマガンが飛来する日本一の越冬地として有名です。特にマガンが朝になると一斉に飛び立つ光景と、その羽音や鳴き声は荘厳で、環境省の「残したい日本の音風景100選」にも選定されています。

伊豆沼のはす
伊豆沼のはす(2009年撮影)

 また夕方になりV字形に並んで沼に戻ってくる時のマガンの姿も印象的です。これら数万羽のマガンの飛来地の条件として、広くて浅くかつ寒すぎない気候と周辺に水田が必要と言われています。水深が浅いと水鳥のえさになる水中植物が育ちやすく、また魚の産卵や鳥の巣作りに必要な生態系を維持することが出来ます。周辺に水田があるとそこに落ちているモミは、鳥たちの格好の食べ物になります。また冬季でも全面凍結しない適度な水温も必要です。まさに伊豆沼はこれらの条件に適した格好の飛来地と言えるでしょう。

 このような伊豆沼には、ハクチョウやマガンなど多種多様な水鳥たちが生息・飛来してくるところから、1985年ラムサール条約に登録されました(関連情報ご参照)

JR東北線新田駅
JR東北線新田駅(2009年撮影)

 さてこの伊豆沼ですが、夏になるともう1つの素晴らしい顔を持っています。それは蓮(ハス)が一斉に咲き誇ることです。その姿は美しく壮観と聞きました。また開花シーズンである7月下旬から8月下旬にハス祭りがあるということです。早速、伊豆沼の夏の顔を見るために出向きました。

 旅の起点は東北本線の新田駅になります。実は伊豆沼は「伊豆沼」と「内沼」があり、そのあまりの広さのために、いろいろな駅からのアプローチがあるようです。今回、最も歩行距離の短い新田駅から伊豆沼に向かいました。徒歩で約8分程度です。

伊豆沼ハス祭り遊覧船乗り場
伊豆沼ハス祭り遊覧船乗り場

 当初、沼を一周してハスを見学しようと思っていましたが、ハス祭りの期間中、小型の遊覧船が運行されていることがわかり、早速、乗船してみました。乗船してわかったのですが、沼一面にハスが覆い尽くされており、その壮観さはうわさ通りで、息をのんでしまいました。まずそのすごさを実感頂くために、下の写真を見て頂きたいと思います。これらの写真は土の上にハスが咲いている写真ではありません。水面を覆い尽くされたハスです。遊覧船は一体どこを通りぬけるのかと思うほどです。水面にピンクの可憐な花がぎっしりと所狭しと咲き誇る光景には、圧倒されてしまいました。また遊覧船はハスの近くを運行するために、改めてハスの大きさに驚されてしまいました。

伊豆沼のハス
伊豆沼のハス

 実は当日まで知らなかったのですが、ハスの花は、朝に最もきれいに咲き、お昼過ぎには花が閉じてしまうようです。遊覧船の運航も15時には終わっていました。出向いた時間帯が午前中でしたので、偶然にも非常にラッキーでした。

 ただ本稿を作成するにあたり、改めて伊豆沼の自然について調べてみたところ、実は伊豆沼は水質が非常に悪く、全国の湖沼水質ランキングでもワースト1位になり、日本一水の汚い沼になってしまったようです。かつては透明度が非常に高く、沼の底を泳ぐ魚を見ることができたようですが、今では一年を通して透明度が低く、濁っており、魚もほとんど住んでいないようです。水質悪化の主な原因と考えられているのが、上流域からの泥の流入や農地からの排水、沼で過剰に繁茂した植物の枯死体のようです。また伊豆沼・内沼のハスは大きいため、ハス群落の下には日が当たらなくなり、他の水生植物が生育できなくなってしまうようです。伊豆沼を遊覧船で廻った時に、大きな花に感銘を受けただけに、複雑な気持ちになってしまいました。また小魚類の減少はブラックバスの外来種による影響とも言われています。

 是非、かつてのように透明度が高く、多くの動植物が住める沼に生まれ変わることができるように祈念します。

伊豆沼サンクチュアリセンタ(淡水魚舘)
伊豆沼サンクチュアリセンタ(淡水魚舘)

 なお近くにはサンクチュアリセンタが幾つかあります。私が訪れた淡水魚舘では、「水」をテーマに伊豆沼・内沼に暮らす水鳥や水棲動植物の生態系を学ぶことができます。また伊豆沼・内沼に生息する淡水魚を見ることができたり、これらの漁に使われていた道具が展示されており、人々との関わりを学ぶことができます。

 

 是非、皆さんも白鳥やマガンの飛来地として有名な冬の伊豆沼のもう1つの顔である、夏のハス祭りに足を運んでみませんか(もちろん車を使わずに)


<関連情報>

①旅程※時刻は訪問当日の時刻表です。もし訪れられる場合は最新の時刻表をご参照頂きますようお願いします。

【2009/8/7(前日仙台泊)】 

仙台(7:46)=(東北本線)=小牛田(8:31)(10:44)=(東北本線)=新田~伊豆沼

 

②ラムサール条約:湿原や干潟などで暮らす生物の生育環境を守ろうという国際的な条約。日本国内には約50ケ所あり。

 

③令和4年のハス祭りは、7月の大雨によりなんと沼が水没してしまい、中止になりました。是非、令和5年にはハス祭りが実施できるように祈念します。

 

④伊豆沼はす祭り会場とサンクチュアリセンター