作成:2021/10/10

 

周遊券から週末パスへ 

 

<カテゴリ:鉄道・バス>


 東北に通い始めた1984年から約40年近く経過したこともあり、随分と旅のスタイルが変わりました。ここではそれを旅の風景と呼ぶことにします。当時を思い出しながら、旅の道具である、「鉄道」「バス」「徒歩」を中心に、流行りのbefore/afterの形式で触れたいと思います。

 今回は旅の手段の中から「鉄道」に焦点を当てて、その変化について振り返りたいと思います。

 

MAX10日の旅

 

 学生時代は、暇にまかせて夏休みなどは1ケ月近く信州に旅して、いわゆる名物ユースなどに長居したものです。ところが社会人になってからは、時間の制約もあり、GWや夏休みの大型連休中の旅の期間は、MAX10日となりました。正確にいえば、車中2泊を入れて11日です。実はこの10日(11日)に重要な意味があったのです。

 

 当時、周遊券というものがあり、そこで指定された期間とエリア内であれば乗り放題という、特に目的も決めずに出かける私にとっては、大変にありがたい切符がありました。その中でも特に重宝したのは、東北ワイド周遊券というものです。その東北ワイド周遊券の有効期間が10日間だったのです。

 

ワイド周遊券
東北ワイド周遊券(交通公社時刻表1983年11月号より抜粋)

  左の図が以前よく使っていた「東北ワイド周遊券」の概要です。1984年の夏から東北に通い始めたのですが、1983年の秋に時刻表を購入して、東北地方についていろいろ調査をしました。その時の時刻表が奇跡的に残っていて、今回のように、当時はどうだったかなどを見る時に重宝しています。

 

 さて左下の「主な出発地」が「東京」の欄をご覧ください。なんと10日間、18,700円で、ほぼ東北地方の全エリアを乗り放題というものです。当時、上野~青森まで乗車券だけで7,900円だったので、往復するだけでほとんど元を取れるという優れものです。しかもエリア内であれば特急の自由席も乗ることができました。さらにエリア内の国鉄バス(民営化後はJRバス)も乗り放題でした。

 

 この周遊券は、私のためにあるに違いないと思ったほど、愛用したものです。周遊券があれば自由席の夜行急行列車に乗れたので、行先も考えずに周遊券だけを買って夜行の急行列車に乗り出かけました。

 

 別項でご紹介の通り、当時、往復は必ず夜行急行列車を使っていました。この場合、どうなるかというと、「行き」すなわち夜に出発する場合は、その日は1日としてカウントされます。従い、現地の滞在期間は実質9日になります。一方、帰りは、降りるまでは乗った日が有効になります。例えば現地滞在10日目に現地を出発して、夜行列車で次の日の朝、上野に到着しても11日目としてカウントされないのです。ただ旅程としては11日目なので、往復を夜行列車を使うと、車中2泊を入れて11日になるのです。

 

裏帳簿を楽しむ

 

 このような格安切符を買うと、どうしても卑しい気持ちが出てきてしまい、「もしこの周遊券を使わなかったら、いくら払う必要であったか」を裏帳簿でつけていました。当時の記録を見ましたが、一番よく使ったのが7万円でした。すなわち18,700円の周遊券を使って、7万円分の列車とバスに乗ったことになります。

 

 ある程度、目的地が決まっていて、1週間程度の滞在期間であれば、少し安い「ミニ周遊券」というのもありました。八甲田山に登るのが主目的であれば、「東北・十和田ミニ周遊券」がぴったしで、7日間の滞在期間で14,300円でした。上野~青森までの乗車券7,900円を往復するよりも安いのです。なるほど、これでは国鉄も赤字になるはずだと、よく思ったものです。

 

変わりゆく格安チケット

 

 さて、現在は全くといっていいほど、このような格安の切符がなくなってしまいました。1988年に国鉄が民営化された数年は、JR東日本全体を1万円で2日間乗り放題という、格安のEE切符なるものが出てはいました。また周遊券が無くなったあとは、1998年に周遊券を縮小したような「周遊切符」が発売されましたが、2013年には廃止となりました。今あるのは新幹線の往復割引やエリア限定のフリー切符です。

 

 これはどう考えればいいのでしょうか。私のように長期に渡り目的もなく、旅を楽しむ人がいなくなったのでしょうか。それとも、きっちりと目的地を決めなさい、そうすればその往復割引はありますよということでしょうか。もしくは私のように、格安チケットを思いっきり使い倒す輩がいるからでしょうか。民営化された以上は、以前のような悠長な経営は許されなくなったのでしょうか。

 

 今となっては10日間の旅など体力も時間もありませんが、少し複雑な気持ちになります。ただ昔はよかったなどと懐古主義になるつもりはありません。旅のパターンが、「長・遠・安」から「短・近・安」に変わっただけのことであり、それがたまたま切符に表されているに過ぎないと思うのです。 

 

週末フリー切符がお勧め

 

 その中でも、現在(21年10月時点)、愛用している超お勧めの切符があります。JR東日本で発売されている「週末フリー切符」です。この概要は右図を見て頂きたいと思います。土日の2日間だけですが、東北地方の南部を乗り放題というものです。また山形フラワー鉄道など、一部の民営鉄道に乗ることもできます。 

 

 値段は8,880円です。東京から仙台までの乗車券が6,050円ですから、往復するだけで元が取れる優れものです。旅だけではなく、ビジネスにも使えそうです。最北端の秋田湯沢にいたっては、片道乗車券が8,030円ですから、片道だけでほぼ元が取れます。私のように最近はもっぱら「安」「近」「短」で旅をする場合は、ぴったしの切符です。

 

 是非、この週末フリー切符を使って、東北地方に足を運んでみませんか(注:脚注ご参照)。 

 

 

 

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<関連情報>

①追加情報 ※2025年2月追加

 ・既にご存知の通り、JR東日本より25/6/27の販売を持って週末パスを終了すると発表されました。これはショックです。このあたりの事情については是非別途考察してみたいと思います。

 ・「周遊券から週末パス」の続編を別ページに記載しました

 

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