YHからBHへ

<カテゴリ:宿>


 「YHからBH」と聞いて、「あっ、あのことだ」とすぐにピンときて頂けると非常に嬉しいです。YHはユースホステル(以下ユース)、BHはビジネスホテル、そうです、宿のことです。

 私が東北地方に通い始めまもなく40年になります。この間、旅のスタイルが大きく変わりました。ここでは変わりゆく風景」と称して、そのスタイルの変化をbefore-afterの形で思い起こしています。ただこれまでご紹介した変化は、いずれもそれまでの手段が完全になくなってしまい、やむを得ず旅の形を変えざるを得ないものばかりでした(例えば「夜行列車」がなくなってしまったので「新幹線」を使うようになった。「周遊券」がなくなってしまい「週末パス」を使うようになった等)。ところが宿の変化については、ユースがなくなったわけでもなく、これまでとは事情が違っているようです。

花巻YH
岩手県花巻YH ※「大悲運眠大会」と称してトランプの貧民で大騒ぎした。【閉館】

 私が東北の旅を始めたのは社会人になって2年目でしたので、当時は学生時代の延長で、「宿」といえばもっぱらユースを利用していました。学生時代はいわゆる「名物ユース」と呼ばれるユースに何泊も連泊して騒いでいたものでした。東北でもいくつかの名物ユースやアットホームなユースが多く、当初は宿泊手段として利用していました。やはり値段が格安であったことが一番大きな理由です。そこで知り合いになり、いまでも年賀状のやり取りをしている多くの友人がいます。

 ところがいつの頃からかユースへの宿泊が少なくなり、民宿や旅館を使うようになり、そして今では99%がビジネスホテルを使うようになってしまいました。この理由について、改めて思い起こしてみることにします。  

 

花巻YH
青森県うとうYH ※ねぶた祭りの最中でも飛び込みで宿泊させてもらいありがたかった。ただし雑魚寝でしたが(笑)【閉館】

①ユースの数が減ってきた。

 ご存知の通り、ユースは青少年少女が安全かつ安価に宿泊できる場所を提供しようという主旨でヨーロッパで始まりました。日本でも1951年に最初のユースが設立され、全国で開業が相次ぎました。ただ1974年をピークとしてその後、施設と会員が減少の一途をたどっています。ちなみに私の手元には1988年発行のユースガイドがありますが、それによると当時、東北地方には46のユースがありました。直近で調べてみると13の施設しかありません。なんと1/3以下に減少しているのです。

 その理由についてはいろいろ言われています。

・消灯時間が厳しく、午後10時には消灯となり、それ以降は部屋に引き上げる必要があった(そのようなユースが多かった)。

・部屋が完全に男女別の相部屋のため、最近のプライベートを重視する傾向と合わないところがあった。

・多くのユースでは、夕食後、「ミーティング」という宿泊者同士の交流の場を設けていたが、これもプライベートを重視する者からは疎まれていた。

・ロケーションが駅前ではなく、結構、辺鄙なところにあった。  等々

 

 そういえばかつては大部屋に雑魚寝をしたことも何度かありました。当時は特に違和感はありませんでしたが、今では考えられない経験をしたものです。これに対してユース側としても、家族部屋を設けたり、朝食後の清掃もなくしたりと改善を図ってきましたが、会員の減少に歯止めがかかっていないようです。

 

おいらせYH
青森県おいらせYH ※四季折々の八甲田山に登山していた頃、ベースの宿としていた【閉館】

②ビジネスホテルの数が増えてきた。

 これも確かです。かつて駅前には何もなかったはずの地に、全国チェ-ンのビジネスホテルが数多く出来て、駅から徒歩数分と大変に便利になりました。また多くのビジネスホテルでは、食事処を併設しているので、夕食・朝食を心配する必要がなくなりました。

 

③この年でユースに宿泊すること自体に恥ずかしさを覚えてきた。

 あまり認めたくはありませんが、これも確かです。ひょっとしたら一番大きな理由かもしれません。かつてユースを利用していた頃、ご年配の同泊者がいれば、若干、奇異の目で見ていました。私も今、ユースを利用すると同じように思われるに違いありません。

北上ワシントンホテル
北上ワシントンホテル【閉館】

 思い起こしてみると、1つ転機になった出来事があります。約30年前ですが、岩手県にある焼石連峰という山に登山した時です。水沢から入り焼石連峰を縦走して北上に戻ってくるという1泊(山小屋)2日の人気コースですが、あいにく雨にたたられて、北上駅に戻ってきた時は結構疲れきっていました。通常であれば、急行八甲田の夜行列車に乗り上野まで戻る予定でしたが、その日は雨で体も冷え切っており、もう1泊したい気持ちになりました。その時に丁度、北上駅前に見えたのが全国チェーンのビジネスホテルです(左記ご参照)。思わず飛び込みで入ってしまいました。BGMをかけながら最上階から眺めた夜景が印象に残っています。過去の記録を見るとどうもそれ以来、ビジネスホテルの利用が増えていったようです。やはり駅前にあるというのが大きなメリットでした。

 

遠野YH
岩手県遠野YH ※民話の里である遠野にあるアットホームなユース

 ただ、一足飛びにビジネスホテルを常用するようになったわけではなく、民宿や旅館なども愛用しました。民宿は今でいう「民泊」そのものです。東北地方には、とてもアットホームな民宿が多く、常宿にさせてもらった多くの民宿があります。旅館は、駅前にあるいわゆる駅前旅館から、温泉地にある温泉旅館までさまざまです。特に駅前旅館には、必ずといっていいほど昔ながらの鏡台が置いてあり、妙なノスタルジーを感じたものです。

 それでも最終的にはビジネスホテルに行き着いたのです。ただどのビジネスホテルも画一的で、若干、食傷気味である中、心がけていることがあります。それは全国チェーンのビジネスホテルではなく、出来る限りその地域に根付いたビジネスホテルに宿泊することです。中には食事処を併設していないビジネスホテルもあるので、そういう場合は、受付で周辺の食事マップをもらい、それを片手に本日の食事場所を探すのが新しい楽しみになっています。

 今回、改めて最新のユースホステルガイドを確認しました。かつて存在していた多くのYHは閉館されているものの、一方で最近、設立されたYHもあるようです。また現在(2022年)廻っている福島県にも、ビジネスホテルが無い地域で、YHがあることもわかりました。年甲斐もなく、久々にユースに泊まってみようかな?と思い始めているこの頃です。